水と大地と子どもたちの未来のために ~決議文の裏側から~

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 大槌湾を望む

▼2月17日に、県知事に以下の要請書を提出してから7ヶ月が立つ。環境整備センターができてからの経過と黒岩知事に対しての1月15日以降の地域の思い、放射能、焼却灰に対しての思いがあり、「子どもたちの未来に不安を残すことはできない」と決議した。

▼いま思えば、放射能を含む焼却灰の搬入を撤回させたことは、大きな出来事であった。連合町内会の役員と地域活動の関係者が軸になって、頭を悩ませて、修正に修正を加えた、下記の決議文と要請文が果たした役割は大きかったのだとあらためて思う。

▼今になって、当時の報道の仕方だけでなく、環境省が広域処理推進のために使った数十億のお金の問題が指摘される。がれきの量の算出が結果として4割程度水増しであったことや、がれき処理の業者の問題、復興関連の予算の使われ方の問題が浮き彫りになり、果たして、がれき処理が「復興の一丁目一番地」だったのかさえも怪しくなる。 被災地の方たちが一生懸命、日々復興に向けて、悩み頑張っている姿とは、違う構造が見えてくる。

▼2月5日、町内会長・副会長の皆さんが集まった。その中で、長老が「俺たちの命は長くない。いま、この訳のわからないものをいれる訳には行かない」「最終処分場をつくったときの役人がいれば、そんなことはいえないはず」と叫んだことが始まりだった。
 各町内会の会合でも、これについては「だれに聞いても反対の声ばかり」という意見もあった。知事の発言に対しての憤りの声も多くの方からあった。なにが課題かということも共有された。

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▼あの日のことを想い出すたびに、映画の「七人の侍」のワンシーンと重なる。野武士とたたかう決意をする寄り合いのシーンだ。 ひとり一人が意見を言い。「そうだ」とうなずく。時代が時代ならば、まさしく「百姓一揆」だったに違いない。 
 
▼そこにいた誰もがたたかうための準備を考えた。 県や国という大きな力と向き合うために、「決議文」と「要請文」をつくった。決議したときには、この文章はできていなかった。笑ってしまうかもしれないが、みんなで決議した後に、なぜ反対なのかをひとり一人が考え始めたのだ。物事はそういった中で動いていく。

▼私はこの日決議をするとは全く考えていなかった。この日は、各町内会の意見をまとめて来るように投げかける会と理解していた。 しかし、「七人の侍」ように、突然の全会一致の拍手で、決まった。異論を挟む人はなかった。そして、決議文をつくって、知事に提出することも決まった。

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▼当初の案「水と大地と子どもたちの未来のために」も、下記に掲載するが、この案になる前にも、町内会長のひとりが過去に県に出した要請書をもとにつくったものをベースにした。
 それを地元の何人もの人がかかわって検討し何度も書き換えた。連日集まり、その度に論議し、また何度も書き換えた。連合町内会の面々からも様々な意見をいれながら最終案となった。つまり決議文をつくる課程で、みんなの意見がまとまり、なにが大切なのかということが整理されていったのだと思う。 

▼誤解された方がいるが、要請文に 「四. 神奈川県は、本件に関して地域と個別の交渉をしないこと。本会が必要と認めた場合に限り、窓口は大楠連合町内会役員会とすること。」を付け加えたことだ。
 ここが一番論議があったところだ。なぜ、わざわざ交渉の窓口を明記するのかということだ。異論もあったが、一番大事にしたかったのは、なにも書かなければ、「協定書」が県と取り交わしてある芦名の問題になってしまう。芦名の会長にすべて責任がいってしまうのは、辛すぎるという思いからだった。
 

▼連合町内会みんなで支え合う事にすれば、一番いい。「良いことも、大変なことはみんなで分け合おう」という思いが、結実した。 また、窓口を明記しないと、バラバラに懐柔される。個々に話があっても、窓口は連合町内会とする方が対応しやすいという考えであった。 守りを固めるための窓口であった。
  

▼ただ残念なのは、決定に至るまでに民意を問うことがなかったことだ。その後、各町内会で回覧され特段の反対意見も修正要望もなかったことから、主旨は理解して頂いていのだとはと思う。しかし、手続きとしては、結果オーライとはいえない。
 

▼だからこそ、今回の決定に際しては、必ず民意を反映させる必要があると考える。連合町内会が民意を問わず、判断をすることはあり得ない。そのことをすれば、結果がどちらにしても組織や役員のあり方が問われることになるからだ。

▼とにかく、決議文に関して言えば、地域の、地域住民による、地域のための決議であった。町内会役員が「地域の未来」を考えた結果、代表として下記の要請文を県に出したということだ。 地域のエゴなのか、「未来の子どもたちへの思い」なのか、評価はいろいろあるのだろうが、じいちゃんたちの思いは結果として知事の提案を動かした。

 
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▼しかし反面、2月末から3月にかけて、暴風雨のような「非国民」報道が待ちかまえていた。連日の被災地の報道。3月11日に向けて、各報道番組だけでなく、バラエティまで、「がれきを受け入れないのは、日本人か」「絆はどこにいった」という罵声が浴びせられた。「テレビは見たくないという声も聞いた。」
 博報堂がつくったといわれる見開き2頁の「超えられない壁」の広告には一億近い税金が投じられた。国家ががれき広域処理という大義のために世論をつくり、善意を揺さぶり、ねじ伏せようととしたのである。

▼マスコミの影響を受けて、心ない電話がたびたびかかってきた。どこで電話を調べたのだろうか。「おまえは日本人か」、「岩手の○○だ。なぜ受け入れてくれないんだ」・・・。心が痛いと叫んでいた。 それと同時に地域の尊厳が損なわれた。 しかし、多くの住民は反論もせず、耐えた。暴風が通り過ぎるのをまった。

▼一方で、私は被災地の現実から発しなければこの決議文も意味をなさず、単なる「地域エゴ」でしかなくなるという思いで、あらためて被災地を訪ねた。
 被災地の人たちと語る中で、復旧・復興に向けた深刻な悩みを次々と聞かせて頂いた。だが不思議とがれきを持って行ってくれと話す方には出会うことはなかった。意を決してがれきについて聞くと、「がれきは俺たちの宝物」、「まだ見つかっていない大切なものがたくさんある」という。
 
 その言葉の意味を心して受け止め、深く鎮魂の意味を感じるとともに、我を振り返り涙した。

▼被災地とつながることは、人と人がつながること。つながることでしか解決できない課題がある。このころから、がれきとの向きあい方は大きく変わった。

▼春になった。北風から穏やかな風と変わった。マスコミの流れも大きく変わってきた。NHKの時論公論では、「芦名の人がなぜ反対するのか。反対する理由」が紹介された。はじめて地元の声が全国に流れた。テレビを見たお年寄りが「やっと本当のことをテレビでやってくれた」と涙した。その後、広域処理は全国の自治体で批判され、費用面や利権などの課題も浮上した。 さらには、新たな広域処理の要請はしないと終止符を打った。

▼そんな中で、知事も「新たな提案」をするといいながら、提案のないまま、夏を迎えた。

 
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▼7月26日、知事は、半年たって、謝罪と「漁網」を搬入する提案をしてきた。政令三市にはいれないという。さて、どのように向き合うのか、各町内で新たな試練を迎える。ただ一ついえるのは、芦名地区は「町内を分断してはいけない」という教訓を持っている。処分場ができたときに、二つに割れて、その後何年間もつらい思いをしてきた経験をもつ。

▼連合町内会長はこの会議の冒頭、地元のそういった思いから、知事に対して「争いの種をまくことだけはしたくない。こういった問題は、住民の総意がなければ前に進むことはできない」とあいさつで語った。

▼今後、住民への説明会が開かれる。最終的には、住民自身が判断をする事になる。ひとり一人の住民が論議を深め判断する必要がある。 とりわけ、被災地支援のあり方も含めた丁寧な論議を深めることが求められる。

 
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【当初案】
水と大地と子どもたちの未来のために
~私たちは「協定書」の改訂は行わず、「焼却灰の搬入」の撤回を求めます~


神奈川県知事
 黒岩 祐冶様                   平成22年  月  日

貴職におかれましては、平素から私ども県民のために、生活環境の向上など拡販に亘ってご尽力賜っておりますことに対し、心から深く感謝申し上げる次第でございます。
「かながわ環境整備センター」の建設に関して、神奈川県と芦名町内会との間で、2002年に「産業廃棄物最終処分場の建設と運営管理に関する協定書」(以下「協定書」)を結びましたが、この10年間、神奈川県は「協定書」を遵守し定期的に排水等の数値の公表を町内会に提示するなど、神奈川県は芦名町内会との間で着実に信頼関係を築いてきました。
 しかし、黒岩知事は平成21年12月20日、神奈川県議会本会議において、「被災地のがれき」を横浜・川崎・相模原の政令三市で焼却し、焼却灰を県の有する最終処分場に搬入する提案をいたしました。事前に協定当事者の芦名町内会にはかることもなく公表したことに対して遺憾の意を表明いたします。
1月15日の大楠連合町内会在住者を対象とした説明会では、知事は被災地の体験をもとにご説明いただきましたが、知事は、「地元はどこか」や「焼却灰の搬入の基準は」という根本的な質問に対して、あいまいな答弁に終始するとともに、その後の定例記者会見では、地域の尊厳を踏みにじる発言を繰り返しされたことは大変残念であります。
 また、当センター及び下流に位置する西浄化センターに関しても放射性物質が濃縮される恐れがあり、放射線物質が安全な管理・除去の機能がないことから安全が担保出来ません。また、下流域に、多くの地域住民の居住地域があることや農・漁業の生産地があり風評被害も含めて安心な生産物を提供することが困難になるおそれがあります。さらに、子どもたちや妊婦さんへの放射線物質の予測不能な影響を拭い去る十分な根拠が見当たりません。
 私たちは被災地への支援についても全国の皆さんと思いは同じです。しかし、水と大地と子どもたちの未来に不安を残す選択をすることはできません。私たちは黒岩知事がご提案の放射能に汚染された「焼却灰」の搬入については受け入れることはできません。直ちに今回のご提案についての撤回を求めます。さらに「協定書」を相互に遵守すること、放射能に汚染されたすべての廃棄物の搬入をしないことを強く求め、下記の事項について決議します。
       
                              記

一 神奈川県は芦名町内会との間に結ばれている「産業廃棄物最終処分場の建設と運営管理に関する協定   書」の改訂を断念し、従前の規定を遵守すること。
二 黒岩知事が提案された震災がれき焼却灰の持込を撤回すると。
三 放射能に汚染された廃棄物については、今後も「かながわ環境整備センターに」一切搬入しないこと。


震災がれき焼却灰の「かながわ環境整備センター」への受け入れ案撤回についての決議


「かながわ環境整備センター」の建設に関して、建設計画決定の神奈川県と芦名町内会との間で、平成14年に「産業廃棄物最終処分場の建設と運営管理に関する協定書」(以下「協定書」)を結び、この10年間、神奈川県は「協定書」を遵守し、定期的に排水等の有害物質の数値を町内会に提示・回覧するなど、神奈川県は芦名町内会との間で着実に信頼関係を築いてきたと考えてきた。
しかし、黒岩知事は平成23年12月20日、神奈川県議会本会議において、「被災地のがれき」を横浜・川崎・相模原の政令三市で焼却し、焼却灰を県の有する最終処分場に搬入することを、事前に協定当事者の芦名町内会にはかることなく表明した。
1月15日の大楠連合町内会在住者を対象とした説明会では、知事からは被災地の体験をもとに説明がなされたが、「焼却灰に含まれる放射能濃度の受入基準」や「知事の言う『地元』はどこか」いう根本的な質問に対しては、あいまいな答弁に終始するとともに、その後の定例記者会見では、「私のプレゼンテーションを聞けば、普通の人なら理解してくれるはず」等、地域の尊厳を踏みにじる発言を繰り返した。 

上記の経緯に加えて、

1.震災がれきが100ベクレル/㎏以下であっても横浜・川崎・相模原の政令三市で焼却時に一般ごみの焼却灰と分別できないことから、必ずしも震災がれきの焼却灰が搬入されず、高濃度の放射性物質が搬入される可能性もあること。

2.当センター及び下流に位置する西浄化センターに関しても放射性物質の安全な管理・除去の機能がないことから放射性物質が濃縮される恐れがあり、将来にわたっての安全が保障されないこと。

3.下流域周辺には、多くの住民が暮 らし、子どもたちの通う小中学校もあり、小田和湾には佐島や長井のたこやひじき等の近海の魚介類、芦名や長坂の大根やキャベツなどの生産地があり、それらの風評被害も含めて安全で安心な生産物の提供が困難になるおそれがあること。

4.さらに、子どもたちや妊婦への放射性物質の予測不能な影響を拭い去る十分な根拠が見当たらないこと、 といった問題もある。

私たちは、被災地への支援についても全国の皆さんと思いは同様であり、これまでも義捐金等できる限り行ってきた。しかし、私たちの地域の農業・漁業の根幹である水と大地、さらには子どもたちの未来に不安を残すことはできない。

上記のことから、私たちは、黒岩県知事が表明された焼却灰の「かながわ環境整備センター」への搬入提案については受け入れることはできない。

以上、決議する。 平成 24年2月17日                  
大 楠 連合町内会長    署名  印  
秋 谷 町内会長       署名  印
佐 島 町内会長       署名  印
芦 名 町内会長       署名  印
久留和 町内会長      署名  印
長 坂 町内会長       署名  印
湘南国際村自治会長    署名  印
佐島なぎさの丘自治会長 署名  印  
長坂市営住宅自治会長  署名  印  
くすのき自治会長      署名  印
みどりハイツ自治会長   署名  印  






震災がれき焼却灰の「かながわ環境整備センター」への
受け入れ案についての撤回要請


神奈川県知事
黒岩 祐治 様                    平成24年 2月17日

貴職におかれましては、平素から私ども県民のために、生活環境の向上など、ご尽力賜っておりますことに対し、心から深く感謝申し上げます。

「かながわ環境整備センター」の建設に関して、神奈川県と芦名町内会との間で、平成14年に「産業廃棄物最終処分場の建設と運営管理に関する協定書」(以下「協定書」)を結び、この10年間、神奈川県は「協定書」を遵守し、定期的に排水等の有害物質の数値を町内会に提示・回覧するなど、神奈川県は芦名町内会との間で着実に信頼関係を築いてきたと考えてきました。
しかし、黒岩知事は平成23年12月20日、神奈川県議会本会議において、「被災地のがれき」を横浜・川崎・相模原の政令三市で焼却し、焼却灰を県の有する最終処分場に搬入することを、事前に協定当事者の芦名町内会にはかることなく表明しました。
1月15日の大楠連合町内会在住者を対象とした説明会では、知事からは被災地の体験をもとに説明がなされたが、「焼却灰に含まれる放射能濃度の受入基準」や「知事の言う『地元』はどこか」いう根本的な質問に対しては、あいまいな答弁に終始するとともに、その後の定例記者会見では、「私のプレゼンテーションを聞けば、普通の人なら理解してくれるはず」等、地域の尊厳を踏みにじる発言を繰り返しました。上記の経緯に加えて、

一.震災がれきが100ベクレル/㎏以下であっても横浜・川崎・相模原の政令三市で焼却時に一般ごみの焼却灰と分別できないことから、必ずしも震災がれきの焼却灰が搬入されず、高濃度の放射性物質が搬入される可能性もあること。

二、当センター及び下流に位置する西浄化センターに関しても放射性物質の安全な管理・除去の機能がないことから放射性物質が濃縮される恐れがあり、将来にわたっての安全が保障されないこと。

三、下流域周辺には、多くの住民が暮らし、子どもたちの通う小中学校もあり、小田和湾には佐島や長井のたこやひじき等の近海の魚介類、芦名や長坂の大根やキャベツなどの生産地があり、それらの風評被害も含めて安全で安心な生産物の提供が困難になるおそれがあること。

四、さらに、子どもたちや妊婦への放射性物質の予測不能な影響を拭い去る十分な根拠が見当たらないこと、といった問題も懸念されます。
私たちは被災地への支援についても全国の皆さんと思いは同じです。しかし、水と大地と子どもたちの未来に不安を残す選択をすることはできません。

私たちは黒岩知事が表明された放射能に汚染された焼却灰の搬入については受け入れることはできません。私たちは多くの地域住民の声を受けて、2月5日、大楠連合町内会は、全会一致で持ち込みに反対の決議をあげました。直ちに震災がれき焼却灰の持込案の撤回を求め、下記の事項について要請いたします。
  


―. 神奈川県は黒岩知事が表明した震災がれき焼却灰の持込案を撤回すること。

二. 神奈川県は芦名町内会との間に結ばれている「産業廃棄物最終処分場の建設
と運営管理に関する協定書」の改定を断念し、従前の規定を遵守すること。

三. 神奈川県は放射能に汚染されたすべての廃棄物については、今後も「かながわ
環境整備センタ-に」搬入しないこと。

四. 神奈川県は、本件に関して地域と個別の交渉をしないこと。本会が必要と認めた
場合に限り、窓口は大楠連合町内会役員会とすること。
  


大 楠 連合町内会長    署名  印  
秋 谷 町内会長       署名  印
佐 島 町内会長       署名  印
芦 名 町内会長       署名  印
久留和 町内会長      署名  印
長 坂 町内会長       署名  印
湘南国際村自治会長    署名  印
佐島なぎさの丘自治会長 署名  印  
長坂市営住宅自治会長  署名  印  
くすのき自治会長      署名  印
みどりハイツ自治会長   署名  印