横須賀総合高校の「中高一貫」の検討を問う。

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▼東京新聞(9月7日付)は、横須賀市教育委員会が、市立横須賀総合高校(同市久里浜)に、中学と高校で継続指導する中高一貫教育の導入を検討していることが分かったと報じた。

▼先日の教育福祉常任委員会では、私はこの「中高一貫」については決定のプロセスに、はなはだ問題がありすぎると指摘した。

○プロセスの課題

▼2012年度に「総合高校のあり方の検討」として、予算化され、その検討チームとしてプロジェクトチームが作られた。全7回のうち、5回が既に開催された。メンバーは教育委員会の課長等9名で構成され、市民・教職員・保護者等や有識者は入っていない。

▼5回の会議のうち、総合高校からは1回・2回に学校長。3回以降は教頭・総括教諭が参加している。中学校からは、4・5回に、校長会から代表が参加したが、小学校校長会には参加の呼びかけもなかった。

▼本来学校の改革ならば、総合高校内で、開設以来10年間の総括として検討したものが基本となって論議されるべきものだが、年度ごとの反省はあっても、高校内で丁寧な論議はされていない。

▼議事録では、1回目に、「横浜・東京に負けない進学校にするために中高一貫」という委員の発言があるが、2回目・3回目では、ほとんど「中高一貫については」論議されていない。

▼4回目で、突然資料に「中高一貫」の論議がされたが、項目の順番は5番目であった。論議も長期的な視点で考えるようなトーンであった。しかし・・・

▼5回目の冒頭、市長・副市長の意向が示され、「大いに進めてほしい」という言葉をいただき、プロジェクトチームの中では、「中高一貫」が改革の目玉であり、「中高一貫」を進めることが、最重要項目にあげられる。

▼中学校校長会代表から、なぜ一番に突然なったのかという質問があり、予算面での問題や経過のおかしさが指摘され、長期的な課題と短期的な課題で分けるべきという意見をしたが、取り上げられることはなかった。すぐに実現すべきという事務局の意見の中で、「中高一貫」は「決定事項」のような扱いで会議は終了する。

○検討ということばと秘密主義

▼しかし、一転して議会への提出文書に関しては、慎重になる。「議員から意見を言われると思うので、議会資料には『検討』という言葉を入れる。」つまり、議会では質問されても「あくまで検討」ということで、反対意見は対応するという不誠実な姿勢である。議会軽視といわれても仕方がない。

▼さらに、この情報はコントロールされ、委員会内部・プロジェクトチーム参加者にも、「箝口令」がひかれた。議員への解禁日は8月27日とされ、それ以前は、プロジェクトチームの審議内容はおろか、「中高一貫」のひと言も正式に伝えることはなかった。

○内向きの議論

▼結果として、オープンな論議ではなく、きわめて内向きの論議で、アリバイ作りのようなプロジェクトチームで論議した形を作り、かねてからの結論である「中高一貫」を、一番の目玉として、打ち出したように推測される。

▼「市長の意向」は、そのために使われたのかもしれないが、第5回の議事録の中でも、何度も早く実現すべき理由として「市長の意向」が使われる。市長が、「中高一貫」に対して、どのような教育観を持つのか。横須賀の教育のあり方を問う課題として捉えているのか。聞かせて頂きたい。

▼調べれば、調べるほど、「横須賀ウォーターサービス」の構造に似たものを感じる。序論に結論があって、必要な論議は省略され、反対意見は聞かず、結論に向けて進んでいく姿である。

▼決定に至るプロセスが、「民主主義」の度合いを示す。議会は儀式的側面が強いが、プロセスを最も重んじる場だ。 手続きこそが、民主主義の根底を支えるからだ。

▼教育委員会を中心としたプロジェクトチームの面々もすばらしい方たちであることを疑うことはない。しかし、今回の決定までのプロセスはおかしい。おかしすぎる。これからの横須賀の教育のためにもきちんと論議し直すことが必要である。

○具体的な「中高一貫」の是非について

▼まず、総合高校を「中高一貫」校にする意味があるのかということだ。市教委によれば、新たな「付属中学校」をつくること。それも全市または、全県からから、「選抜」される。各学年80名から120名の規模を予定しているという。
▼市内には、現在鷹取中から大楠中まで、23校の公立中学校と特別支援学校2校があるが、この計画が進めば、新たに「選抜」によって生徒を集める中学校がつくられることになる。平塚や相模原では既に、中等教育学校として開設。横浜では南高校が今年度より開設した。しかし、表向きの「スローガン」とは裏腹に、課題は大きい。

▼下記の記事でも、10倍を超える競争率。横須賀ではより高い競争率が予想される。私立に比べれば公立で学費は安い。当然その「選抜」に対応した、塾や講習が行われる。いろいろなものをそぎ落としても、当然「エリート校」化するような宿命を持つ。

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▼また、文部科学省は、中高一貫の設置に関しての通達で、「学力を伴う選考」はできないとしていることから、学校の教育課程に沿うような問題は出題されない。適性検査と称して、「学力テストのB問題」のような、思考を問う設問が多く、そのための講習・塾が開設されているのが実情だ。


▼とりわけ、総合高校の近隣の小学校に大きな影響を与える。学校選択制度でさえ課題は大きいが、新たな選抜をもうけるならば、そのための対応に追われることになる。県内の中等教育学校周辺の小学校では、地域の学校なればこそ、公立ということから、こぞって受けた。6年生の半分に当たる30人受験して、3人しか合格しなかった。9割近い生徒が不合格となり、地元の中学校に進学した。該当校の教師は、子ども間に「いさかいの種」を撒くようなものという。

▼合格した生徒とそうでない生徒が隣接した中学校に通う。一方は高校受験もなく、教育内容もゆとりがあり、優れた英語教育も行うとすれば、なおさら「同じ公立で格差があるのは許せない」という声も出よう。 公教育のあり方をも問うような改革はすべきではないと考える。

▼地域を巻き込んだ競争意識から、さまざまな問題も起こった。調査書に対しての保護者の関心が高まり、クレームも増加した。小学校教育に与える影響も極めて大きい。その結果、子ども同士の人間関係にひずみを与ええたという報告もされた。

▼私学においてはこれまでも小中一貫校はある。逗子開成や鎌倉学園や関東学院などもそうである。私学ならば中高一貫もあり得るし、これまでも中学校受験は行われてきた。

▼今後すべての高校が、地域の学校として中高一貫になるのならば、教育のあり方として研究する余地はある。しかし、入学できるのは、毎年100人足らずの子女であり、他の高校に広がる余地はない。公教育で、税金を投じて、100人前後の子女に、あえて特別なカリキュラムを提供する意味は見あたらない。公教育は広く多くの子供たち教育環境の改善のために、力を注ぐべきではないか。

▼このまま開設すれば、「横須賀の教育のあり方」にかかわる大きな問題をはらむ。選考方法、学区はどの範囲とするのか。高校からの生徒とのカリキュラムの差はどうするのか。競争意識が、子ども世界に新たな格差やひずみを生みはしないか。調査書を使うとなれば小学校の評価基準の課題も生じよう。さらに、教職員は県費職員なのか、市費職員なのかもはっきりとしていない。 市費の職員となれば、市の予算で雇うこととなる。

○中高一貫は必要か。

▼総合高校の先生にお話を聞いた。「今の学校は本当にいい状況だ。このままで十分だと思う。あと、部活の予算や教師の研修さらに、教師全体の異動が課題だが、大きなモデルチェンジは必要が考えられない」との声。複数の方に聞いたが、おおむね同じ回答であった。

▼これまで、100億を超える資金を投入してきた総合高校。さらに、校舎を作れば10億と試算する。これを教育予算の中から、投入することになるのか。新たな「箱モノ」への批判もある。これまで、坂本小・陽光小・桜台中・上の台中・光洋小学校が統廃合されてきた。来春には平作小学校が統合される。それぞれ学校が地域との厳しい議論を重ねて苦渋の選択をしてきた結果である。「こういう提案をされると、何のために統廃合をしてきたのかと言いたくなる。」とある校長は語る。

▼横須賀市の「教育振興基本計画」が昨年作成された。一年間の論議の中で、この先10年の教育政策の柱として、きめ細かく、政策を策定した。小中一貫については、論議され位置づけられているが、中高一貫は話題にもなっていない。教育振興基本計画に位置づけはない。どの部分に関連して位置づけがされるのか。このことも大問題である。

▼多くの教職員・保護者・市民の方から、ご意見をいただいている。教育施策として「中高一貫」が本当に必要なのか、何が大切なのかをもう一度考える機会としたい。 私は20日・21日の本会議・一般質問では、市長の姿勢を基本として、質疑を行うつもりだ。真摯な討議を行いたい。


▼先日、私の尊敬する元校長とお酒を交わした。その席でいわれたことを思い出した。

「『不易流行』という言葉があるが、教育は「流行」を追っていいことがない。一時はよいと思って、はやりのようにみんな教育改革だといって、学校選択だの二学期制だの、いろんな事が行われたが、もうあちこちで見直しが始まっている。そのことで学校はまた忙しい思いをする。

 大切なことは昔も今も変わらない。やはり教育は先生が子どもとどうかかわるかだ。先生にやらなくても良いことばかり押しつけるから、どんどん教育ができなくなる。一番大切なことをきちんとやること。そうすれば、いじめだって何だって、学校で起こっている問題はおおかた解決する。そういう意味では、「不易」を大切にすることだな。」



○市立横須賀総合高が中高一貫教育検討 東京新聞 2012年9月7日

6年間を通じ、社会人に必要な知識や働く意味を教えるキャリア教育や、実践的な英語教育を重視した指導を目指す。同高の教育改革の一環。市教委は年度内に最終改革案をまとめ、2013年度から有識者を交えて具体的な検討に入り、17年度にも導入したい考え。
 中高一貫校は中学と高校の学習内容をうまくつなげ、特色のあるカリキュラム編成が認められている。中学と高校が一つの学校になる「中等教育学校」、市や県など同じ設置者がつくる中学と高校を接続する「併設型」、設置者が異なる中学と高校が連携する「連携型」がある>横須賀総合高校は併設型が想定され、付属中学の新設が検討されている。
キャリア教育や英語教育の重視は、文部科学省も打ち出している。小中学校や高校でキャリア教育を充実させる方針を示したり、13年度からの高校の新学習指導要領では、英語の授業を英語だけでするよう求めたりしている。
 横須賀市教委の平沢和宏・教育政策担当課長は「6年の枠で継続するキャリア教育や英語教育はメリット。公立中高一貫教育校ができれば、進路の選択肢も広がる」と話す。教室の確保や財政負担、選抜方法の検討など課題もあるが「導入の方向は変わらないだろう」という。
県内の公立中高一貫教育校は、市立は本年度横浜市で一校開設された。県立は09年度に相模原市と平塚市に開校。経済的負担が少ない公立の中高一貫教育へのニーズは高く、本年度入学者の入試の競争率は、横浜市立が10.6倍、県立では相模原が9.41倍、平塚が5.43倍だった。
横須賀総合高校は、市立の3高校を統合し、普通教育と専門教育の両方を学ぶ「総合学科」の高校として03年度開校。全日制と定時制があり、生徒数は956人。


○横須賀総合高校が中高一貫検討へ、13年度から着手/神奈川新聞  2012年9月13日

横須賀市教育委員会は2013年度から、市立横須賀総合高校(同市久里浜)で中高一貫教育を導入する検討に入る。6年間一貫してのキャリア教育や英語教育などを提供することで、人材育成の強化を目指す狙い。
横須賀総合高校は普通科、工業科、商業科の3市立高校が統合した総合高校として2003年に開校した。現在は24クラスがあり、国際人文や自然科学、生活・福祉、ビジネスなど8系列に約950人の生徒が通っている。
11年度の調査では卒業生の進路のうち60%を四年制大学、7%を短大、21%を専門学校が占めている。市教委は開校10年目を契機に、プロジェクトチームを発足させて高校の方向性を検討。進学志向の強まっている生徒の需要に応じた教育の充実が必要と判断した。
今後は既存の系列や科目の再編成から着手。スポーツ活動や部活動の充実も検討しながら、6年一貫教育の具体的な検討を13年度に始める方針。
 開校時期は未定。選考は意欲の評価や適性検査で行う手法などを検討している。学区は全市域とし、中学校に当たる部門は新設するが、既存の中学校との統合にするか定員を新たに増やすかは今後決めるという。
 横須賀市内で中高一貫教育を提供している学校には横須賀学院、緑ケ丘女子がある。市教育委員会は「公立の中高一貫の需要は横須賀市民にとっては大きい」としている。