知事の新たな提案は「漁網」

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▼7月19日の東京新聞で、芦名に搬入するものは「漁網」という報道があった。当初の提案の「がれきの焼却灰」については撤回となり、知事の新たな提案が「漁網」ということである。

▼マスコミの報道が先行し、連合町内会では「漁網」ということと簡単な説明以外、搬入量も、搬入に関しての手順も詳細については何も聞いていない。県の説明がない中での報道であるので、「漁網」「放射能に汚染されていないもの」というだけでは、いいも悪いも判断しようがない。

▼ ただ、今回の提案について言えば、「がれきの焼却灰」の搬入が撤回されたことは大変大きなことだ。これは、2月に大楠連合町内会が決議した事から、「政令三市での焼却と芦名への灰の搬入」の計画を断念、川崎・横浜・相模原で焼却する必要はなくなったことにもなるのだろう。放射能の汚染を心配する多くの市民の声に応えた格好である。

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▼東北沿岸部を走ると、がれきと共にうずたかく積まれた漁網が見つかる。大きな浮き球やがれきも絡んで処理が大変困難なものの一つであることは確かだ。材質はナイロンやポリエステルなどで、可燃物の扱いとなる。可燃物ではあるが処理方法は溶融してリサイクルも可能であるが、埋め立てをしているケースもある。
 「漁網」は、環境省は広域処理の必要なものとして、いち早く報道したが、現地の声を聞けば、土地のかさ上げの下敷きや、シイ・タブ・カシの自然の防潮堤に使うこともできるもので、今後、資材として使えるものであって、急がなければならないものでないという話もある。もう一度、どうしても「広域の処理の必要があるのか」は、現地の行政だけでなく住民等の民間レベルでの情報交換が必要だ。

▼さらに、処理方法が課題となる。そのまま袋(フレコンバッグ)に入れて並べるのか。裁断して細かくして搬入されるのか、処理の方法は十分な配慮がされるのかも重要である。また、鉛の混入も大きな課題である。漁網の処理業者も鉛があるか、ないかで、引き取らないケースもあるぐらいである。とりわけ、裁断と鉛との分離は難しいものであることがわかってきた。その作業には相当な時間を要する。裁断機が利用できないケースも多いと聞く。鉛の分別は、手作業となる。

▼震災がれきの「漁網」は、環境省によれば、岩手県には広域処理分として 、5万4000㌧あるというが、そのうちどのくらいの量を持ちこむのか。環境省のデータによれば、岩手県の北から、久慈0.4万㌧・宮古1.9万㌧・釜石2.1万㌧・大船渡1.1万㌧あり、全体で5.4万トンである。 たとえば1万㌧ならば、どのくらいの量(かさ)になるのだろうか。

▼それ以外にも、広域処理の金銭の流れや、ゼネコンへの独占的な利益供与のような側面が強くなっている中で、批判の声も大きい。広域処理の対象として、「わざわざ横須賀に持ってくるべきものなのかどうか」といった疑念をはらす説明が必要だ。さらに、県がどの程度の処理費用を受け取るの等も開示されたい。

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▼どちらにしても、理解と納得を続けることでしか、問題の解決策はない。きわめて民主的に筋道を立てて進めるべきである。民主主義は決定までのプロセスをどれだけ大切にするかが問われるのである。今回の新たな提案が、合意に近づけるのかは時間がかかることになろうと思う。間違っても連合町内会や町内会長のみの懇談で決めることにはならない。説明会を開催し、その上での地元住民(とりわけ芦名町内会)の意見をきちんと折り重ねた中での決定とならなければならない。丁寧な論議とその積み重ねの中でしか、地元の合意は得られない。

▼また、「協定書」の変更には、芦名の地域を中心に反対の意見も多い、「協定書」を改訂したときに、歯止めがなくなってしまうのを心配するからだ。そういった論議も真剣にする必要がある。

▼大楠の住人は、自然に囲まれて生活をしてきた。これからもそうだ。漁業と農業を生業(なりわい)としている方も多い。被災地の現地の方が困っているという声ならば耳を傾けよう。想いに共感もしよう。地元でもなんとか被災地のために何かしたいという声も聞いた。しかし、「風評被害」だけは別だ。生活にかかわる最悪の事態は想定せねばなるまい。気をつけていても、結果としておこる場合もある。現在でさえ、JAよこすか葉山では風評被害が10億にも及ぶが、請求しても補償されていない。仮に風評被害があれば、全額の保証を県・国は担保する必要がある。

▼これまで連合町内会が主張してきたのは、「子どもたちの未来に影響があるものは入れたくない」という地域への想いである。その想いを無視しつづけててきた知事が、どのような謝罪をするのか、何を謝罪するのかがわからない。その上で、新たな提案が、どんなに言葉巧みに説明されようとも、「被災地にも、芦名に対しても『誠意』を持った提案でなければ、首を縦に振る方は少ないだろう。

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県、被災地漁網埋め立て計画 迷走5カ月 地元は困惑
2012年7月19日 東京新聞

東日本大震災で生じたがれきの受け入れ計画に、黒岩祐治知事が修正を表明してから五カ月。県が打ち出したのは、岩手県で放置されている大量の漁網の埋め立て計画だった。足踏み状態が続いた末の提案に、処分先の県の産廃処分場「かながわ環境整備センター」の地元には戸惑いがにじむ。 (中沢佳子)

「『被災地が漁網の処分に困っている。受け入れられないか』と話があっただけ。まだ諦めていないのか、と思った」。処分場がある大楠連合町内会の長谷川俊夫会長は今月十二日、横須賀市を通じて県の意向を聞いた。

 昨年末、黒岩知事が突然がれきの焼却灰受け入れを表明し、その後の地元説明会での住民感情を逆なでする知事の発言などで、住民の不信感が募った。

住民側は二月、知事に撤回を要請。県は修正案を模索した結果、漁網の埋め立てを伝えてきた。横須賀市の田中茂資源循環部長は「市はあくまで地元サイドに立つ」と慎重な姿勢だ。

 課題は残る。処分場の建設時も地元の反発を招いた県は、二〇〇二年に「県内の廃棄物に限定して受け入れる」という協定を地元町内会と結び、建設にこぎ着けた。震災がれき同様、漁網の受け入れには、協定書の見直しが必要になる。長谷川会長は「埋め立てて大丈夫な物なのかどうかもまだ分からない」と話し、県の説明を待つ姿勢を見せた。



被災地の漁網 埋め立て計画     2012年07月20日/朝日新聞

 東日本大震災の被災地がれきのうち、県が岩手県の漁網を受け入れ、横須賀市にある県の産業廃棄物処分場に埋め立てる計画があることがわかった。今月中にも、黒岩祐治知事が処分場近くの町内会に説明する。

 県幹部らによると、受け入れを検討しているのは、津波で海に流され、引き揚げられるなどした岩手県北部の漁網。放射性物質は「ほとんど検出されていない」という。大型の網は焼却処理が難しく、そのまま埋める方針で、焼却によって放射性物質が濃縮することもない。

 黒岩知事は昨年12月、被災地がれきの受け入れを表明したが、住民の反対などで暗礁に乗り上げている。漁網を別枠で受け入れることで、「できるところから被災地支援を始めたい」(県幹部)との狙いがある。環境省によると、岩手県内で広域処理が必要な漁網ごみは5万トン強ある。



2012年7月20日 読売新聞

神奈川県は震災がれきの広域処理で、岩手県久慈市や周辺自治体から津波で使えなくなった漁網を受け入れる方向で環境省などと最終調整に入った。

 神奈川県横須賀市の処分場に埋め立てる方針。被災地では津波で大量の定置網などが流され、処理が漁場復興の課題になっている。がれきの広域処理で自治体が漁網を受け入れるのは初めて。

 環境省によると、漁網は柔らかいネット状のため細かく破砕するのが困難で、化学繊維のため燃やすと高温になり、一般的な焼却炉での処理も難しい。同県は放射性物質検査で不検出だった漁網に限って受け入れ、横須賀市の県の管理型最終処分場「かながわ環境整備センター」に埋め立てる方針だ。黒岩祐治知事は近く、処分場の周辺住民に処理計画を説明する予定。

 岩手県で広域処理の対象となっている漁具・漁網は久慈、宮古、釜石、大船渡の4市で計5・4万トンに上っている。