講談社の創作絵本 「キャラメルの木」


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・しんのすけは、小学1年生。夏休みにひとりでお泊まりに行った、おばあちゃんの家で、初めて戦争のお話をききました。
 それは、おばあちゃんが戦争中についた「うそ」のお話。おばあちゃんは、死にそうな弟をはげまそうと、ひとつの悲しいうそをついてしまったのです。
 そんなおばあちゃんが倒れ、しんのすけは、ある決心を……。



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上條さなえ(かみじょう さなえ)
1950年生まれ。児童文学作家。執筆や講演を通して自己の体験をもとに家族のふれあいの大切さを訴えつづけている。著書に、『さんまマーチ』(国土社)、『コロッケ天使』(学習研究社)、『友だちじゃないか』(小学館)、『子どもの言葉はどこに消えた?―崩れゆく親子関係』(角川書店)、『家族をつくる―殴って抱いて、私の子育て』(角川書店)など多数。

小泉るみ子(こいずみ るみこ)
1950年生まれ。早稲田大学文学部卒業。以降、絵を志し、おもに児童書や教科書の挿絵などの分野で活躍している。おもな作品に、『小泉るみ子四季のえほん』シリーズ(ポプラ社)、挿絵に『クレヨン色の川の町で』(上條さなえ/作 岩崎書店)、『トウモロコシが実るころ』(文研出版)、『子うさぎのチノ』(ポプラ社)ほか多数。



『キャラメルの 木』に寄せて
 わたしの母は、29歳で戦争未亡人になりました。当時2人の子どもを抱えた母の苦労は、想像を絶します。やがて恋愛をし、わたしを生みますが認知はされませんでした。65歳まで働いた母は、晩年、いつも戦死した夫の会社製のキャラメルを前掛けのポケットに入れていました。母の夫はフィリピンで戦死しましたが、遺骨はありません。母はキャラメルを夫の遺骨だと思っていたのかもしれません。母が死んで5年目の夏に、母の伝言を書きました。




 戦争って、おなかがすいて、ひもじくて、大事な人を失うこと……。上條さんらしい直截でわかりやすいメッセージにあふれた絵本です。
 原稿をいただいた時は、正直「どうやって絵本に……?」と途方に暮れました。1年ほど原稿を寝かせているうちに、おばあちゃんの切ない想いが少しはわかるような気がしてきて、やっと取りかかることができました。
 いつのまにか、しんのすけ君よりおばあちゃんに、より近い年令になりました。再び戦争の愚行がくり返されないことを願っています。


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 表紙の大きな青々とした木、夏空を思わせる扉絵、小泉るみ子さんの描く世界は、晴れ晴れと明るく、どこまでも駆けていきたいような空と大地が印象的です。「おばあちゃんとのひと夏の思い出」を描くこの絵本は、けっして暗い絵本ではありません。背後にある「戦争」のことは、著者ふたりの切実なメッセージにあるとおりですが、おばあちゃんとしんのすけの心のつながりとラストに芽生える新しい命の連鎖には、ほんとうに心洗われる気持ちがします。この夏、ぜひ一度手に取ってみていただきたい1冊です。(K)

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